「な〜ん〜で〜・・・こんなところにいるんですかぁ〜、あなたが」
ロイド・アスブルンドが珍しく呆れと困惑の混ざった声を上げた。それも無理のない話だ──目の前に事前連絡も無く、ブリタニア帝国第二皇子シュナイゼル・エル・ブリタニアが立っているのだから。
「病院に健康な人間が来る理由など、一つしかないだろう?あれの見舞いだよ、ロイド」
目の前の人物に関する情報と経験、現在の状況、過去、そして何よりスザクとの関わりから冷静に計算して導き出される分かりきった答えだったとは言え、実際に口にされると疲れるものだ。自分のこの反応も分かった上で、わざと先のような返答をしていることも分かってロイドはますます疲労感を覚えた。
「よく時間が取れたものですねぇ」
「あれのためなら、この程度の時間は作るさ」
寒いっ寒すぎるっ。今のこの発言さえ自分の反応を面白がっているだけだと分かっていても、言葉から受ける印象はどうにもならない。少しも本音など塗されていない発言だと分かっているのに、この冷気はどうだ。
「あ〜そ〜おですか・・・。意外と暇なんですね〜第二皇子というのも」
この程度の皮肉なら可愛いものだろう。何よりあまりの寒気に、言い返す気力が湧かない。
「そうでもない。だから早く知りたい。実際──あれの様子はどうなんだ」
ああ、案外さっきの発言にも極僅かにしろ本音が混じっていたのかもしれない──とロイドは思った。こんな考えを口に出したりはしないが。そしてスザクの様子を思い出して、ロイドは溜息を吐いた。
「芳しくはありませんね」
「そうか──」
静かに返された応えから確かに感じた目の前の人物の本音には、ロイドは気付かなかったふりをしてスザクの病室へと案内した。
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