目の前に突きつけられた不安に押し潰されそうになる
その心を救い上げてくれるのはいつも小さな温もりだった──


池に浮かぶ月に手を伸ばして

 ルルーシュが病院に着いた時、予想外に人が居て驚いた。妹のナナリー、リヴァル、カレン、ミレイ、そしてニーナ。今この病院にはシャーリー以外の生徒会役員全員が揃っていることになる。
 「スザクはっ・・・スザクは・・・大丈夫なのかっ」
 ナナリーには詰問できなかったルルーシュは、結果としてルルーシュにとって最も聞きやすいリヴァルに大声で詰め寄った。だが、ルルーシュに答えたのはリヴァルではなかった。
 「ちょっとルルちゃん、落ち着きなさい」
 「落ち着け!?こんな時に!?」
 やんわりと止めに入ったミレイを厳しい眼差しで睨んで、ルルーシュは大声で反駁した。
 「ここは病院よ」
 ミレイの言葉に我に返ったルルーシュが口を噤んだ。
 「スザクさんは無事です、お兄様」
 「ごめん、大声を出して」
 タイミング良く入ったナナリーの言葉に、ルルーシュは落ち着きを取り戻して静かに謝罪を口にした。そして一度深呼吸をしてからルルーシュは口を開いた。
 「それでスザクの状態は・・・。何かの下敷きになったと聞いたけど・・・何があったんだ」
 ルルーシュの言葉に、ニーナの肩が目に見えて震えた。それに気付いたルルーシュが不審そうな目を向ける。
 「ニーナ?」
 「はいはい、ちゃんと説明するから、そんな怖い顔して睨まないの」
 「別に睨んだつもりは・・・」
 「兎に角スザクは無事だから。そんな顔しなさんな」
 リヴァルに指摘される程、酷い顔をしていたのだろうか。そっと自分の左手に触れた温もりに目を向けると、ナナリーが両手で包み込むように握っていた。直ぐにゆるゆると強張りが溶けるように落ち着いていく心に、ルルーシュはどれだけ自分が切迫していたのかを知った。
 「まず、スザク君の状態だけど、取りあえず何度も言ったように無事よ。今はぐっすり眠っているわ」
 だから静かにね。付け加えられた言葉に、ルルーシュは無言で頷いた。


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