欲しいものは全力で奪い取れ 1

 キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ンとごく一般的な全ての授業の終わりを告げる鐘の音を聞いて、ルルーシュは溜息をつきたくなった。今日の放課後は生徒会業務に絶対に参加しろと言われている。勿論業務とは建前で、自分の誕生日祝いであることは分かっている。普通に食事をして、デザートを食べて、パーティを楽しむのならルルーシュとて参加することに否やはない。色々と思うところが無い訳ではないが(特に諸々の会長の趣味)、 自分の誕生日を祝おうとしてくれる気持ちは嬉しい。生徒会の皆でにぎやかに楽しめるなら、ナナリーも喜ぶだろう。
 だが。
 ちらりとクラス内にいる生徒会の面々の顔を見回してみると、やはり逃げるか、という考えが脳裏を過ぎる。ニーナは何故か自分に向かって小さく頭を下げてから教室を出て行くし、
 (今のはどういう意味だ!?)
残った面々の如何にも何か企んでいますって顔!特にリヴァルのにやつくのを抑え切れていない締まりのない顔をみれば、普通のパーティなど用意されていないことは一目瞭然なのだ。シャーリーは少しだけ申し訳なさそうな顔をしているが、明らかに興奮を抑えきれていないし、カレンは病弱設定に似合わない「にやり」と横に書きたくなるような笑みを浮かべている。おい、仮面が剥がれ掛けてるぞ、とルルーシュは心の中でだけ呟く。これで最後の砦のスザクまでリヴァルのような締まりの無い顔をしていたら!ああ、ショックで二三日休むかもしれない、とリヴァルに大変に失礼なことをちっとも失礼とは思わずにルルーシュは考えながら、ゆっくりとスザクを振り返った。
 ああ、良かった、最後の砦は守られた。
 ルルーシュの誕生日を祝えることが嬉しくて仕方がないんだ、というスザクの心の声が聞こえてきそうだ。とルルーシュは柔らかい微笑みを浮かべるスザクを至福の思いで見つめた。ああスザクに後光が射している。スザクの笑顔を見詰めることに夢中なルルーシュには、 窓を背にしている為、必然的に背後から日光を浴びているだけという事実など、目に入らない。
 一方のスザクはそんなルルーシュの視線を真正面から受け止めながら、
 (ああ、ルルーシュあんなに嬉しそうな顔をして。誕生日パーティ楽しみにしてくれてるんだ)
 しっかり成功させないと、と全然違うことを考えていた。
 そして残りの生徒会メンバーは・・・
 (何、あのルルの締まりのない顔!)
 (ルルーシュもスザクの前だと形無しだねぇ)
 (というより、鼻の下伸びきってるわよ)
 という心の声での会話を成立させていた。
 (その締まりのない顔を何とかしろ、ルルーシュ・ランペルージ!)
 (そいつは羊の皮を被った狼だぞ、騙されてるぞ、枢木スザク!)
 この時うっかりルルーシュ&スザクの見詰め合いを見てしまったクラスメイト達の思いは一つであった。

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