「スザクっやっと、見つ、け、たぞ」
「ルルーシュ、パーティで走っちゃ駄目だよ」
パーティの間中ルルーシュはスザクを探し続けていたのだが、なかなか見つけられなかった。対角線上に離れた所に佇んでいたスザクを見つけるや否や、ルルーシュは走っていた。
「仕方、ない、だろ・・・どれ、だけ・・・探し、た、と思ってる、んだ」
苦笑して、スザクは水をルルーシュに渡した。
「だからってそんなに走らなくても。逃げたりしないのに」
「本当に?」
「ルルーシュ?」
「俺が何を言っても、逃げたりしないか?」
急に表情が変わったルルーシュを、スザクも真面目な顔で見つめた。
「逃げたりなんてしないよ。君が話すことなら、何だってちゃんと聞くよ」
「──ありがとう」
すぅと、一つ息を吸ってルルーシュは用意していた包みをスザクに差し出した。人ごみの中、スザクが代わりに入手したチョコレートではない。スザクの為だけにルルーシュが別に買って用意したものだ。
「これが、俺の気持ちだ」
「これ──。ルルーシュ・・・ありがとう」
てっきりあの時買ったチョコレートを渡されるのだとスザクは思っていた。それなのに、差し出されたのは全く別のチョコレートだった。嬉しくて瞳を潤ませながら、スザクは自分が用意したチョコレートを出した。
「これは、僕からのチョコレートだよ。・・・ルルーシュの口に合うといいんだけど」
「おまえが作ったものが合わない筈がないだろう。ありがとう」
スザクの手作りチョコレートを受け取って、ルルーシュの脳裏にはファンファーレが鳴り響いた。喜びのあまり、春の野原をピンクの花弁が舞う光景が浮かび、青空を飛ぶ小鳥は歓喜の歌を歌う。
(春だ。春がきたんだ!)
さあ、スザク、今すぐ一緒に踊ろう。浮かれたルルーシュが差し出した手をスザクがしっかりと握り返し、いよいよルルーシュは昇天せんばかりだった──。
「ありがとう。ルルーシュ、やっぱり持つべきものは友達だね」
「・・・・・・は?」
「僕、本命のチョコレートなんて貰えないし、こんなに綺麗なチョコレートを貰えて嬉しいよ」
ギュッとルルーシュの手を強く握って、スザクは満面の笑みを浮かべている。キラキラと輝く笑顔が眩しい──ではなくて。
「ちょっと待て。おまえ、俺のチョコレートを何だと思ったんだ?・・・・・・義理チョコじゃ、ないぞ?」
「やだなあ、ちゃんと分かってるよ。友チョコだろ?幼馴染だから、僕のだけ生徒会の皆とは違うのにしてくれたんだよね」
(全然分かってない〜〜〜〜っ)
「実は僕が作ったチョコレートも、ナナリーとルルーシュの分だけ、他の人とは違うんだ」
みんなには内緒だよ、と照れくさそうにスザクは笑った。
「そうか・・・食べるのが楽しみだな・・・ありがとう」
ルルーシュの短い春はこうして終わった。
End