暖房故障発見@特派
「さささささ、寒い」
「な、何だこの寒さは!?研究室が冷凍庫みたいになってる!」
「主任、暖房が壊れてます〜動きません〜〜」
イヤアアア、と研究員達の間に広がる悲鳴。
「お〜は〜よ〜う〜・・・・・・って何これ!?寒すぎるよ、どうなってるの!?」
「おはようございます。・・・あら、本当に寒いですねぇ」
「おはようございます、ロイドさん、セシルさん」
「寒い、寒い、寒い!もう〜早く暖房つけてよ〜」
「それが、暖房が壊れちゃってるんですよ」
「えええぇぇぇ〜〜」
「あら、たいへん」
「ランスロットは!?」
「え?ランスロットならいつも通りの場所に置いてますけど・・・」
「ランスロットは絶対零度でも通常動作できるだけの低温耐久性を保持していますよ?」
「だから、そんな駆け寄ったりしなくても大丈夫ですよ」
「全然聞こえてないわね」
「あああ、僕のランスロットがカチンコチンになってるよ!」
(いや、ランスロットは初めからカチンコチンですよ!)
「ロイドさん、ランスロットは固くて当たり前でしょう?機体の鉱物比率を言いましょうか?」
「いや、いいです。そうだねぇ〜ランスロットはこの程度の気温なら大丈夫だね〜」
(えええ、そんなあっさり!?)
「ああ〜それより早く何とかしてよ〜さ〜む〜い〜よ〜」
「確かに困りましたねぇ」
(ところで、セシルさんは何であんな平気な顔なんだ!?)
絶賛暖房故障中@特派
「おはようございます。・・・皆さんどうしたんですか?コートを着たまま仕事なんて」
「おはようございます、枢木准尉。暖房が故障中なんですよ」
「え、暖房が!?だからこんなに寒いんですね」
「スザク君、おはよう」
「おはようございます、セシルさん。大変ですね」
「そうなの・・・修理して貰っているけれど、なかなか直らなくて」
「そう言えば、ロイドさんの姿が見えませんけど・・・」
「ロイドさんなら、そこで蹲ってるわ」
スザクが視線を向けた先には、オフィスチェアに膝を抱えて小さくなっているロイドの姿が・・・
「あの・・・ロイドさん、もしかして凍っちゃってるんじゃ、ないです、か?」
指でえいや、と小突いたらコロンと転がりそうだ。
「そうかもね」
「そ、そうかもね・・・って」
「大丈夫よ、ランスロットが動き出せば、あの人はどんな状態でも動き始めるから」
「そ、そうですか・・・」
(それでいいのかー!?)
まだまだ暖房故障中@特派
「この状態じゃ、殆ど仕事にならないですね」
ロイドさんは凍ってしまっていますし。とはスザクの心の声。
「そうねぇ。PCもこれだけ寒いと動作が鈍くなるし・・・」
「他に暖房器具って無いんですか?ストーブとか・・・」
「「「!?それだああ!!!」」」
「え!?あの皆さ・・・」
だだだだ〜っと凄まじい勢いで散らばっていく特派の人々。
「大学側にならきっとストーブがある筈だ!掛け合えば借りられるだろ!いや、駄目と言っても全力で奪い取れ!」
「自分、行ってきます!」
「そういえばこの間、ロイドさんが七輪を嬉しそうに持ってきてただろ。あれは何処に行った?」
「たぶん、ロイドさんの私物倉庫の筈です!」
「よし探せ!」
「イエス、マイロード!」
数分後。
「ありました!七輪を発見しました!!」
「良くやった!さあ、早くここに持って来てくれ」
「はい!」
どん、と置かれたのは知らない人間が見れば妙な形の壺にしか見えない、スザクには見慣れた七輪。
「・・・・・・ところで、これってどうやって使うのかしら?スザク君、知ってる?」
「はい。七輪は炭っていう燃料をこの穴に入れて、火を着けて使います」
「あら。じゃあ、スミ、という燃料を探さないといけないのね」
「炭だ、炭を探せええ!」
「イエス、マイロード」
数分後。
「炭がどこにも見つからないであります、軍曹!」
「炭、未だ発見に至りません、軍曹!」
「なにいぃぃ〜」
「・・・・・・セシルさん、あの人って軍曹でしたっけ?」
「違うわよ」
「じゃあ・・・なんで軍曹って呼ばれているんでしょうか?」
「それはね、その場のノリと勢いよ」
「はあ・・・そうですか・・・」
(こんなことしてる場合なのかなぁ)
「おおお炭〜、炭はど〜こ〜だ〜」
未だ暖房故障中@特派
「ストーブを借りてきましたよ」
「うおおおおお待ってました〜〜!」
次々に持ち込まれるストーブに歓声が上がる。
「ロイドさんの傍にも、一つ置いて貰えるかしら」
「あ、じゃあ僕が持っていきますよ」
電気ストーブ、石油ファンヒーター、昔ながらの上に薬缶を置くストーブ・・・幾つも持ち込まれたストーブの中から、スザクが選んだのはハロゲンヒーター。
「ロイドさん、ストーブを持ってきましたよ」
「・・・・・・」
反応できないロイドを無視して、スイッチ・オン。
そして数分後。
「ああ・・・生き返ってきたよ〜スザク君」
「おはようございます、ロイドさん」
「おはよう〜。は〜あったかいよ〜」
「そんなに暖かいですか?・・・あ、本当だ。こっち側は凄く暖かいですね」
「あれ?そう言えばなんで君、パイロットスーツを着てないの?」
「なんでって・・・まだ来たばかりですし・・・こんな気温ですし」
「駄目だよ!スザク君はパイロットスーツじゃないと!」
「へ!?」
「君はランスロットのパーツなんだから。最高のパーツじゃないと、僕は認めないよ〜」
「あの、それとパイロットスーツに何の関係が・・・」
「何言ってるの〜!最高のパーツには最高のパイロットスーツが必要不可欠でしょ〜?これで純潔派みたいなパイロットスーツでランスロットに乗られたら・・・ああ、駄目だよ〜やっぱりランスロットに似合う白のパイロットスーツじゃないとね〜」
「そ・・・そうですか」
「と言う訳で、君はパイロットスーツに着替えること」
「ええ!?でも、この寒さじゃ風邪を引きますよ」
「何の為に鍛えてるの〜君なら大丈夫だよ〜」
「でも・・・」
「ほらほら早く〜」
「・・・・・・」
枢木スザク准尉、敢え無く敗北。
ランスロットが関わった時のロイドに敵うのは唯一人である。
いつまでたっても暖房故障中@特派
「スザク君、こんな寒い中でパイロットスーツを着なくても良かったのよ」
「セシルさん・・・いえ、ロイドさんがパイロットスーツじゃなきゃ駄目だって」
「あら、ロイドさんがそんなことを?」
「は・・・はい。あの、でも僕は大丈夫ですから」
拳の形を確かめるセシルをスザクが慌てて宥める。
「でも、その姿のままで立っていたら風邪をひいてしまうわ」
「今は寒いですけど、ランスロットのコクピットに入ってしまえば暖かいですから」
「そうねぇ・・・それじゃあ乗るまで暫く掛かるから、それまではこれを着て我慢して貰えるかしら」
「え、そんな。それじゃ、今度はセシルさんが風邪をひきますよ」
着ていた真白なコートを脱ぐセシルをスザクが慌てて止めるが・・・
「あら大丈夫。予備のダウンもカーディガンも置いているの。それより、スザク君が早く着ないと」
「それじゃ・・・お言葉に甘えます──ああ、やっぱり温まりますね」
「ね?着て良かったでしょう?」
「はい。ありがとうございます、セシルさん」
「スザク君、ちゃんとパイロットスーツに着替えてきたんだね〜感心、感心」
「ロイドさん?こんな寒い日にまでスザク君に──」
「あ、あのセシルさん、風邪を引いたらいけませんから、早く上着を着てください」
「そうね。それじゃ、ちょっと取ってくるわ」
モードが切り替わる前のセシルを引き戻せるのはスザクのみである。(完全に切り替わると、スザクにもどうにも出来ないが)
「ストーブが入った割には、あまり暖かくなってないですね」
「そうなんだよ〜部屋が広すぎてねぇ」
「・・・ロイドさん、何で後ろにハロゲンヒーターを引きずっているんですか」
「ヒーターの前にいないと寒くて動けないんだよ〜」
「・・・・・・」
(だからって、台車にヒーターを乗せて、腰に紐で括り付けなくても)
ロイドが動けば紐で繋がった台車も付いてきて、ヒーターも一緒にロイドの後ろを着いて行く仕組みである。
「ほらほら、こうやって動いても付いてくるんだよ〜」
「ロイドさんっ、急に動いたら危ないですっ」
「え〜大丈夫だよ〜・・・・・・ギャー!」
急に引かれて倒れたハロゲンヒーターが床に倒れて転がる。
「何をしているんですか!?ロイドさん」
ギクリ。
「これ、温風の前にいないと寒いから、ね」
「だからって、こんなことしたら危ないでしょう。没収です」
「あああ、そんな〜」
(早く暖房が直るといいなぁ)
2007.02.10
Novelのその他に置いている「只今暖房故障中」の前段階です。
寒さのあまり、特派の皆さん総出で少々壊れ気味です。