「おや、これは」
「どうしたC.C.?」
雑誌を読んでいたC.C.が突然上げた声に、ゼロは読んでいた資料から目を離してC.C.を振り返った。チームスタッフの前では必ず被っている黒い仮面は、今は外されその正体を──ルルーシュ・ランペルージの素顔を──晒している。
「おまえから枢木スザクを奪った男のインタビューが載っているぞ」
C.C.の言葉を聞いた瞬間、ルルーシュのこめかみが引き攣った。表情は必死に取り繕っているが、「あの男もF1チームの代表だ。F1専門雑誌にインタビューくらい載るだろう」と紡ぐ言葉は平静のようだが、声には抑えきれない怒りが滲んでいる。
(大概分かりやすい男だ)
「それに奪われた訳じゃない。あいつは律儀だからな、先に申し込んだ方を優先しただけだ」
だから、断じて俺がシュナイゼルに負けた訳ではない。と言葉にしなくても、ルルーシュが心中で呟いていることは、C.C.には手に取るように分かる。
(普通、チームのドライバーとして雇うことを「申し込んだ」とは表現しないと思うが)
その点を指摘すれば、ルルーシュはさぞ面白い反応を返すだろう。だが、枢木スザクに関しては時々言い訳がましくなるルルーシュの子ども染みた反論を聞く気分ではなかった。何を言えば、一番暇つぶしになり、且つルルーシュの反応を楽しめるだろうか、とC.C.は暫し悩んだ。
「その言い方だと、枢木スザクは結婚を申し込まれても先着順か」
「・・・!!!???」
「まあ、押しに弱そうだしな。平身低頭誠意を持って申し込まれたら、毅然と断れなくて、考えさせてください、とか言った挙句に済し崩しに──」
「させるかぁ!」
C.C.の言葉に最初は愕然として固まったルルーシュは、続いたC.C.の言葉に仮面を床に叩きつけて立ち上がった。
「スザクは俺のものだ!」
「・・・は?」
決然と拳を握り締めて「シュナイゼル兄上と結婚などさせるか」と叫ぶルルーシュにさすがのC.C.も声が出ない。
(いつ枢木スザクとシュナイゼルが結婚することになったんだ?)
ここは、二人とも男だと突っ込むべきか、幾ら何でも枢木スザクも断るだろうと突っ込むべきか。いや、それ以前に枢木スザクはおまえのものではないだろうと指摘するべきか──。
「スザクに結婚を申し込まれても断るようにギアスを掛けるか?だが、スザクにだけはギアスを使う訳には・・・しかし、あの兄が本気になったら──」
ぶつぶつと独り言を漏らしながら考え込むルルーシュの視界には、C.C.はもはや入っていない。
結局、ルルーシュに突っ込むのは全て諦めてC.C.は電話を手に取った。
「おい、ピザを頼むがおまえのクレジットを使って構わないな」
「ああ、好きにしろ」
C.C.の予想通り上の空のルルーシュから許可を取り付けると、ピザ屋に電話を掛けた。
「ピザの宅配を頼む。デラックス・スタミナ・カルビとスペシャル・Wバーガー・ピザと特製焼肉ピザを全てLサイズで」
届いたピザはどれも美味しかった──が。
「全種類肉ばかりは、やはりつまらんな」
次はシーフードにしようと誓うC.C.の横で、ルルーシュは「卒業のように結婚式に乗り込むか!」と叫んでいた。
End