せめてあなたに暖かな朝を

 薄暗闇の中、彼女は一人、巨大な慰霊碑の前に立ち尽くしている。彼女自身はそこに居る理由さえ知らずに。
 振り向いた彼女の視界に自分の姿が写る。けれど、その瞳には「ルルーシュ・ランペルージ」としての姿は写らない。
 「あなたもご家族を亡くされたんですか?」
 穏やかな声で紡がれる言葉に、親しい者への親密さは無い。
 「亡くしてから初めて分かることってあるんですね」
 どれだけ大事な存在だったかを今更に思い知る。あくまで他人に対する彼女の眼差しを受け続けて。
 もうあの笑顔が自分に向けられることは無い。口喧嘩をすることも、もう、無い。
 「朝はきますよ」
 それなのに・・・自分に関する記憶がない彼女にまで救われる。
 「朝は、来るじゃないですか」
 繰り返された彼女の言葉に”見ず知らずの”自分への優しさが滲む。
 「いままで、ありがとう」
 こんな一言で足りるものではないけれど。今の彼女には意味が分からなくても、それでも伝えたかった。
 ありがとう。
 そして──さようなら。シャーリー。
 せめて君には暖かな朝が訪れることを──。


End

2007.01.21

第14話補完話です。
見終わって感想を書いて、それでも収まらずにそのまま書いてしまいました。
そろそろ朝の5時です。
イメージを崩してしまっていたら、本当にごめんなさい。
でも書かずにはいられませんでした。
シャーリーには、本当に幸せになって欲しいです。