薄暗闇の中、彼女は一人、巨大な慰霊碑の前に立ち尽くしている。彼女自身はそこに居る理由さえ知らずに。
振り向いた彼女の視界に自分の姿が写る。けれど、その瞳には「ルルーシュ・ランペルージ」としての姿は写らない。
「あなたもご家族を亡くされたんですか?」
穏やかな声で紡がれる言葉に、親しい者への親密さは無い。
「亡くしてから初めて分かることってあるんですね」
どれだけ大事な存在だったかを今更に思い知る。あくまで他人に対する彼女の眼差しを受け続けて。
もうあの笑顔が自分に向けられることは無い。口喧嘩をすることも、もう、無い。
「朝はきますよ」
それなのに・・・自分に関する記憶がない彼女にまで救われる。
「朝は、来るじゃないですか」
繰り返された彼女の言葉に”見ず知らずの”自分への優しさが滲む。
「いままで、ありがとう」
こんな一言で足りるものではないけれど。今の彼女には意味が分からなくても、それでも伝えたかった。
ありがとう。
そして──さようなら。シャーリー。
せめて君には暖かな朝が訪れることを──。
End