「くくっくっ・・・」
「・・・・・・殿、下?」
突然笑い出したシュナイゼルの姿に、ロイドは何と声を掛ければ良いのか分からない。
「いや、そんな顔をしなくても私は大丈夫だ。おまえがあまり不安そうな顔をしているので、少々調子に乗った」
「ああ〜そ〜お〜で〜す〜か〜・・・・・・」
ロイドは一瞬でも本気で心配した数秒前の自分を罵りたくなった。
「ただ・・・私にとっても意外だっただけだ。思えばあれと離れたのは初めてだ。それがこうも影響があるとは思わなかった」
「は?」
「何故今日に限っていらいらしたのかを考えていた。私はスザクの真っ直ぐな瞳に慣れすぎていたようだ」
「・・・・・・・・・・・・」
「どうかしたのか、ロイド?」
シュナイゼルが気が付けば、ロイドは嫌そうな顔をしていた。
「あ〜スザクって言うんですね〜貴方の大事な子は」
「大事な子?」
「本気で不思議そうな顔をしないでください〜」
疲れ切った顔でロイドは首を振った。
「まるで私があれに捉われているような言い方をするんだな」
「違うんですか〜?」
「違うな。私があれを捉えているんだよ、ロイド」
氷の刃を思わせる微笑を浮かべて、シュナイゼルは嬉しそうに続けた。
「あれは初めて会った時から、真っ直ぐに私を見ていた。私が誰か分かっていて、怯えることなど一度もなかった」
「──・・・十歳の子どもが?」
俄かには信じられない話だ。それが本当なら、成る程大した子どもと言えるだろう。
「あれで私を憎んでいれば、尚良かったのだがな。二度と人が死ななければ良いと願うばかりで、あれが私に憎しみをぶつけることなど一度もなかった」
「憎まれたいんですか〜?」
「そうすれば、全てが私の物になるだろう?」
「──・・・・・・その子には随分迷惑な話ですねぇ〜・・・」
何者にも執着など持たなかった男が一度執着を覚えるとこうなるのか──。
(貴方、やっぱりブリタニア皇族だったんですねぇ〜)
ロイドの言葉にシュナイゼルはさも楽しそうに笑った。
「手に、入らなかったらどうするんです〜?」
「愚問だな」
「確かに、貴方が失敗したことなんて見たことないですけどね〜。・・・でも、手強そうですけど〜?」
「直ぐに全てが手に入っては面白くないだろう?だが、あれが私から逃れることはない」
「待ち草臥れても・・・・・・子ども相手に犯罪だ〜け〜は、しないでくださいね〜」
「さてどうだろうな。あれ次第だな」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「冗談だよ、ロイド」
冗談に聞こえない、という言葉をロイドは何とか飲み込んだ。
End