「あ〜面白かった〜、貴族ごっこ!僕もなかなか上手いでしょう〜」
「・・・・・・ロイド、おまえは一体何を考えてこんな真似をした?」
シュナイゼルを取り囲んでいた人垣を理由を付けて追い払い、二人だけでダンスホールを出て周囲に誰もいないことを確認するなり、大笑いを始めたロイドにシュナイゼルは少々頭が痛くなる。大学で出会ったこの友人のことを常々変わった人間と思ってはいたが、まさかこんなことをやってのけるとは思ってもいなかった。
「あれ〜?僕の貴族っぷり、下手でした〜?」
「いや、完璧だったな。私に新年の挨拶と称して散々ぶつけてくれた嫌味も実に完璧だった」
「そうでしょう〜。練習しましたからねぇ〜」
「・・・・・・何の為に」
「そりゃあ勿論、あなたのそういう反応を見るため!いや〜面白かった〜」
ロイドは心底満足そうだった。こんなことの為にこの友人は、わざわざあんな完璧な挨拶を身に付けたというのか。一応貴族であり、機械工学、航空力学、そして何よりナイトメアフレーム工学についてロイドが発表した数々の論文の功績により、毎年この新年の祝賀の儀に呼ばれているのに断り続けていた友人が。本当にそれだけが理由なのか──このナイトメアフレームに関係する研究以外には殆ど興味を向けない友人に限って、それは有り得なかった。
「それで、おまえが出席した本当の目的は何だ?まさか本当に、私の反応を見たいが為ではないだろう」
「貴方の反応を見てみたかった〜っていうのも本当なんですけどね〜。まあ、それだけじゃないのも否定しませんよ〜」
相変わらずにやにやとロイドは笑みを絶やさない。
「貴方のお気に入りは?来てないんですか〜?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何の事だ」
「またまた〜。そ〜んなに返事に詰まる貴方なんて見たこと無いですよ〜。誰のことかなんて分かっているでしょうに」
何度か電話であれのことをロイドには話していた。確かに隠そうとするのは無駄だった。だが・・・
「お気に入り、と表現される覚えはないな」
「貴方も大概素直じゃないですね」
呆れたように溜息をついて、ロイドが両手を挙げて肩を竦める。・・・なるほど、確かに私の反応を面白がっているのも本当らしい。
「てっきりここにも連れてくるのかな〜と思って楽しみにしてたのになあ〜」
「・・・・・・・・・断られたからな」
「へ?」
「何度も言わせるな。私とともに一度ブリタニア本国に行くかと聞いたら、あっさり断られた。・・・私の迷惑になるからと言って」
「貴方の誘いを断ったの!?へぇ〜まだ十歳の子どもでしょう〜?大物だねぇ〜」
身体を半分に折って「貴方断られた経験なんて殆ど無いでしょう〜」とロイドは大笑いしている。
「・・・・・・初めての経験だ」
「あっはっはっはっは、初めて振られたんだ〜お〜め〜で〜と〜う〜」
何が面白いのか、不愉快になる私に反比例するかのようにロイドは嬉しそうに笑い転げた。
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